« クルーザー初体験 | メイン | 江ノ島名物 »

2008年6月 9日

満員電車がなくなる日

080609manindensya.jpg

ネット上で話題になっているこの本を読みました。日本の通勤ラッシュをなくすための提言をまとめた書籍ですが、著者はJR勤務を経て鉄道コンサルタントという仕事をしている業界の専門家ですが、大胆なアイディアに発想の転換のヒントを得ることができました。

鉄道はタクシーと違い庶民の公共の乗り物。タクシーは特定の人が使う贅沢なものだ、という思い込みが世の中に、そして規制を行う監督官庁にもあり、それが運賃の硬直化につながった結果、通勤ラッシュの原因の1つになっているのではないか、ということがまず指摘されます。


確かにタクシーは値上がりしたら乗らなければ良い、でも鉄道は毎日使わざるを得ない人がたくさんいる。恐らくそんな理由から鉄道は値上げするとマスコミが大騒ぎします。需要と供給の価格メカニズムが働きにくい構造になっているのです。

しかも最も重要が集中する通勤時間には定期を買って割引を受けている人が大量に乗り込んでくるのです。需要が大きいのに価格が下がっているということが満員電車の根本的な原因です。

例えば通勤時間帯は定期は禁止、逆に割増運賃をとるようにすれば、通勤通学時間の分散が進み、混雑率は緩和されるでしょう。ただし実現のためには、会社の勤務形態の変化や学校の始業時間のシフトなど制度の変更に時間がかかります。鉄道会社1社の取り組みではなく社会全体を巻き込んだ制度の変更を進めていくことが求められるのです。

また、著者は座席に座れるのが始発駅近くで乗った人に集中し、同じ料金なのに差別が発生していることにも注目します。グリーン料金を払って立っている人と一般料金で(一般車両ですが)座っている人がいるという現実を経済学の価格メカニズムで解決できないかを提案しています。これも共感できる意見です。

つまり時間帯によるピークロードプライシングによる需給の調整、座るのと立つのに対して価格差をつけ(1分10円程度なら払う人が多いとの過去の結果を示しています)乗客全体の効用を最大化すること、が通勤の経済学的解決法としているわけです。

もう1つのアプローチは輸送方法のイノベーションです。信号システムの改善、総2階建て車両の運行(これがビジュアルには最もインパクトがあって面白いです)、3線運用(これは多くの人が考えるアイディアでしょうが、24時間運行が可能になるというのは目からうろこです)、鉄輪式リニア、など多くのアイディアが真面目に検討されているものです。

さらに5章で書いているモノを地下に、人を地上にというのも納得感がありました。地震などの災害時に大きな被害が想定される地下は、貨物を中心にして地上のトラックを減らし、地上は人を運ぶ鉄道にすべき、という発想は実現性にはハードルが高いかもしれませんが長期的ビジョンとして考えておくべきテーマです。

ICカードを使った戦略的プライシングなど、満員電車で実際にワークするのか疑問の残る提案もありましたが、経済理論とイノベーションから満員電車をなくそうという著者の情熱が行間から伝わってくる読後感の爽快な一冊でした。

満員電車に疑問を持っている人の一読をお勧めします。

「満員電車がなくなる日 鉄道イノベーションが日本を救う」(角川SSC新書)


投稿者 shinoby : 2008年6月 9日 06:07

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.shinoby.net/mt/mt-tb.cgi/5497

コメント

しのびーさん、こんばんは^^

いつもながら面白そうな本のご紹介ありがとうございます。
上記サマリーを読むと、なんだかシンガポール的な理に適った提案ですね。

ぜひ読んでみたいと思います。

投稿者 mama-chan : 2008年6月 9日 21:14

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。