アルファ(α)からベータ(β)へ
今朝の日経新聞朝刊の経済教室は池尾和人教授が書いていますが、これからの資産運用にヒントと勇気を与えてくれるものでした。
金融活動の利益の源泉には
1.アービトラージ型
と
2.バリューアップ型
が存在し、前者のような市場の歪みを見つけることによって「安く買って高く売る」ビジネスモデルの終焉が今回の米国の金融危機の根本的な要因であるとの見方です。
つまり、デリバティブやサブプライムローンによって、(意図的か意図的でないかは別として)適切な情報提供をされたものとされないものの間に情報格差(金融リテラシーの差)が発生し、金融業界に多額の利益が発生したということです。例えば、
・デリバティブによって各種のリスクに価格が付けられるようになり、価格体系の歪みから先駆者に「創業者利得」がもたらされましたが、それは裁定取引を多くの人がすることになるにつれ歪みが無くなり利益を得られなくなります。
・サブプライムローンは金融リテラシーの低い層につけ込んだ略奪的貸し付けの側面も持っています。逆に略奪まがいの借り入れもありました。
・金融商品の内容をいたずらに複雑化することによってリスクの過小評価をもたらすような取引もありました。
このような「新たな価値をうまない取引」が資産価格の大幅な水準調整につながったということです。これらの取引はある意味アルファ(α)を狙う投資活動と同じです。つまり市場の平均を上回るための「人を出し抜く経済活動」です。
しかし、金融活動にはもう1つの利益の源泉があります。それはベータ(β)です。金融を通じて価値の向上に貢献し、その一部を利益として受取る金融活動です。市場に資金を提供し、成長に貢献することによってその一部を利益として受取ることは裁定取引をしなくても実現できるのです。このような投資によって市場の平均のリターンを受取るインデックス型の投資は、その投資によって価値が生み出されるのであれば、本質的な収益として成り立つものです。
市場の混乱はしばらく続くのかもしれませんが、自分の資産運用がどのような価値を提供しているのかを考えることによって、そこから受取ることができる収益を考えることができます。
アルファを狙う投資は無くなることは無いでしょうし、否定するものではありませんが、池尾氏のコメントを読みながら、今回のマーケットの混乱は、マーケットがアービトラージからバリューアップへ、アルファ(α)からベータ(β)への回帰を模索している動きであるように思いました。
「アルファ(α)からベータ(β)へ」の関連記事
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: アルファ(α)からベータ(β)へ
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.shinoby.net/mt/mt-tb.cgi/9856
コメント(1)
コメントする
内藤忍の本・おすすめ本
過去ログ
Disclaimer
このウェブサイトはShinobyの個人的な考えを掲載したものであり、Shinobyが所属ないし関係する機関、組織、グループ等の意見を反映したものでありません。本サイトは投資の勧誘ないし銘柄の推奨を目的とするものではなく、本サイトに掲載された情報をもとにして投資その他の活動を行い、その結果損失をこうむったとしても、Shinobyは責任を負いません。
また、Shinobyの判断で書き込まれたコメントを削除することがあります。記名者の特定されたコメントの場合は記名者に連絡の上削除しますが、無記名のコメントの場合は通知無しに削除を行います。

内藤忍お金の話をしませんか?
「5つのステップ」ですべてがうまくいく!
投資信託は運用会社で選べ
今回の池尾氏の記事は、いろんな意味で時機を得た良い記事でしたね。
きっと金融機関で伝統的な融資業務をなされている方は「よくぞ言ってくれた」と感じた人も多いと思います。