「イシューからはじめよ」 − 「犬の道」株式会社でどう使えばいいのか?

安宅和人さんの書かれた「イシューからはじめよ」を英治出版さんから頂き、読ませていただきました。
ネット上での前評判を聞き、著者のブログを読んだ時点で、「この本はスゴ本ではないか」という予感がしていたのですが、実際読んでみて、その直感は正しかった、というか予想を超える素晴らしい作品でした。
問題解決の方法を研究者として、コンサルティング会社のコンサルタントとして、極めてきた方法が紹介されているのですが、後半の具体的な手法やプレゼンテーションに落とし込んでいくやり方よりも、やはりタイトルでもあるイシューの見つけ方について書かれた、序章と1章が特に印象に残りました。
前半の話は
「バリューのある仕事とは、イシュー度と解の質によって決まる」
という言葉に集約できます(32ページの図6を見ておきましょう)。ここで、
イシュー度=自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
解の質=そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
となるのですが、イシュー度に対しての関心が低く、解の質を上げることをしても、価値が生まれない、というのが著者の主張です。逆に言えば、イシュー度の高い課題に自分の時間を集中できれば、少ない時間でバリューのある仕事が実現できる。
今までの仕事術や問題解決法の本が解の質を高めることにフォーカスして、その手法を紹介することが中心になっていました。与えられた仕事を、効率的にこなす術という方向です。本書はそれでは、本質的な価値の創造にはつながらないと論破したところに大きな価値があります。
また、プロフェッショナルは、「どこまで変化を起こせるか」「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」によって評価されるというコメントは、今までにない新しい価値にこだわる必要性を説いていることを示しています。
しかし、この本は読み手を選ぶ本であることも事実です。
まず、内容が極めて濃く、さりげない表現の中に重要な示唆がたくさん含まれているため、本質をつかむのには、それなりの経験が必要だと思います。イシューをまず見つけろ、というメッセージが伝わっても実際にそれを実践できる人は、残念ながらそれほど多くはありません。高度で難しい作業なのです。
読みやすい本、とアマゾンのレビューなどで評価している人がいますが、この本は口当たりは良いですが、深みもかなりあり、簡単に読み解ける本ではないと思います。何回も何回も読み込んで、その中から何かを見つけていくような本なのです。
また、現実問題として特に典型的な日本企業のような保守的な会社では、この手のアプローチに生理的な嫌悪感を持たれることもあると思います。コンサルタントや研究者には、ユニークで人と違う価値観が強く求められます(というか、それが無ければ仕事として成立しない職業です)が、会社で仕事をする場合には、周囲との調整が必要になってきます。
チームメンバー全員にこのイシューからはじめるアプローチを理解してもらい、納得させるのは、保守的な会社であればあるほど、ハードルが高いのが現実です。相変わらず残業していると、「お、頑張っているね」などど声をかけてしまう上司のいる会社(本書でいう「犬の道」株式会社)は多いのです。
本書の手法を自分の仕事に持ち込んでみて、果たして仕事はどう変わるか?会社での評価はどう変わるか?それによって、自分の能力、会社の人材評価のレベルが見えてきてしまう。使いこなせないということが、読み手に自分や会社の能力の限界を知らしめてしまうという恐ろしい1冊でもあるのです。
使い方はともかく、問題解決法に関する本としては、数年に1度の傑作だと断言します。これだけの濃厚な情報と知識がわずか1800円というのは破格です。
<参考図書>
「イシューからはじめよ」 安宅和人
「これからの思考の教科書」 酒井穣
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