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クリエイティブなレストランに行くと、刺激を受けます。そして、出てきたメニュや、ワインのセレクション、さらには食器やカトラリーのチョイスまで、思わずメモをしてしまうような世界が広がっていて、「Shinoby`s Bar」の参考になります。そんな時いつも思うのは、「パクリ」と「リスペクト」の違いは何かという根源的な疑問です。

例えば、以前行ったレストランで出てきた白ワインですが、ミネラル香が強く、とても気に入りました。見れば、輸入元は私が良く知っている会社です。早速、ワインリストに追加候補としてラインアップしました。これは、どのお店でも仕入れられるものですから「パクリ」ではありません。

あるいは、お店でセンスが良いと思ったお皿やフォーク、ナイフといった備品の製造会社名や製品番号を聞いて、それと同じものを使う。これも、「パクリ」ではありません。

では、お料理はどうでしょうか?

六本木にあるレストランJGのスペシャリテである、半熟卵に細かく刻んだ野菜とサワークリームを載せ、キャビアをトッピングした一品(写真)。これと、まったく同じものは作れませんが、似たようなものにトライすることは、できます。もし、そんな料理をお店で出すことになったら、これは「パクリ」でしょうか?

数年前に、スペインにあったエルブリ(日本人の発音はエルブジ)というレストランが、料理界に革命を起こしました。泡を使った料理や、顆粒状にした料理など、今までの料理の概念をぶち壊すような斬新な調理法が世界的に話題になったのです。しかし、その数年後、日本のあちこちのレストランで「エルブジ風料理」というのが流行し、奇をてらった調理法のレストランが増えました。

「パクリ」と「リスペクト」の違いは、オリジナルに対して追加している付加価値にあると思います。元々の料理を忠実に再現しようとしているだけでは、オリジナルを超えることは絶対にできず、単なる「パクリ」の域を出ません。そこに、自分なりの解釈や新しい発想を吹き込んで、オリジナルには無かった価値が追加されることによって、はじめて「リスペクト」が生まれるのです。

音楽で言えば、コピーとカバーの違いということだと考えます。例えば、この唄は山口百恵さんの31枚目のシングルのカバーですが、「パクリ」ではなく元歌に対する「リスペクト」に満ちています。

「パクリ」と「リスペクト」の差は、分からない人には感じることができないものなのかもしれませんが、2つの間には天と地ほどの大きな違いがあります。

いつも、リスペクトに満ちた仕事をしたいものです。