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不動産投資の判断材料として投資するエリアの人口動態は極めて重要だと言えます。日本国内は国全体では人口減少フェーズに入っていますが、もう少しミクロに調べてみると興味深いデータが見えてきます。

表は総務省統計局が公表している「住民基本台帳人口移動報告」(2015年2月)からの抜粋です。市町村レベルでの人口の動きを細かくデータ化しているものですが、その中で人口流入の多かったベスト10が表示されています。

東京は23区をまとめて東京都特別区部という分類になっていますが、人口流入数は圧倒的であることがわかります。それ以外のベスト10の市町村の多くは、人口流入のペースが2014年になって少し落ちています(横浜、名古屋はほぼ横ばい)。また、川口市や流山市は大規模開発による一時的増加といった特殊要因と考えられ、継続性に関しては不透明と言えます。

流出入だけではなく、人口自体の増減を見なければ正確なことは言えないかもしれません。しかし、このようなデータを見ると、特別な目利きができる人は別として、不動産投資をこれから始めようとする初心者の人がまず注目すべきエリアは、やはり東京23区ということになると思います。

人口流入していても、それ以上に賃貸物件の供給が増えれば、需給は悪化します。流入さえしていれば問題ないという訳ではありません。しかし、人口が流出しているエリアでは、人口が自然増するか賃貸物件の供給が減らない限り需給は悪化しますから、エリア選択の重要なファクターになることは間違えないのです。

この報告の中には更に細かいデータとして、都道府県別の転入超・転出超の市町村の数字も公表されています。全国で見ると、転出超過となっているのは1718市町村のうち1311市町村あり、全体の76.3%を占めています。今や、8割近い市町村では、入ってくる人より出ていく人が多くなっているということになります。

東京都にある40の市町村についても、流入超になっているのは23市町村(東京23区を含む)で、17市町村では転出超になっています。東京でも半分近くの市町村では人口が流出しているという事実は、大都市圏においても場所によって格差が生まれていることがわかります。

国全体が人口減少する中で、人口動態という観点から有望なエリアを選択するのは、日経平均が下がる中で値上がりする銘柄を探すのに似ています。高い経済成長と人口増加で国全体が拡大している新興国とは異なる投資戦略が求められるのが、国内の不動産投資なのです。

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