160419Tesla

東京の青山一丁目にテスラのショールームがあって、予約すれば誰でも試乗できます。乗ってみて初めて理解できることは、テスラのライバルはベンツやポルシェといった高級カーメーカーではなく、競争相手のいない完全なブルーオーシャン市場を作ろうとしていることです。

Nich Sakai氏のブログによれば、そのテスラが発表した新しいデザインのモデル3(写真)の予約が世界中で殺到しているそうです。2週間で40万台。日本では若者の車離れが、叫ばれていますが、テスラが売っているのは車ではなく、クリーンエネルギーでクールに生活するという「ライフスタイル」です。

2016年3月に、米国市場でテスラの現行のモデルXが3,990台売れたのに対し、トヨタのプリウスのプラグインハイブリッド車(PHV)は、わずか7台しか売れなかったという衝撃的な事実があります。同じエコカーなのにこれだけの差が付いたのは、技術ばかりにこだわりコンセプトやデザインよりもスペックを競う日本メーカーが消費者から支持されなくなっているからではないでしょうか。

テスラのイーロンマスク氏は、アメリカではWallという自宅設置型の蓄電池と太陽電池を車とセットにして、100%のエネルギー自給自足生活を提案しているそうです。車は単体で売っているのではなく、エコなライフスタイルを構成する要素の1つという位置づけです。

テスラの車のデザインは、決して突出しているとは思えません。伝統的な欧州の自動車メーカーの高級カーと比べると高級感には欠けていて、デザインもまだ物足りないところがあります。

しかし、ライフスタイルを売るというコンセプトが打ち出され、デザインも徐々に洗練されていけば、日本の自動車メーカーは競争相手にすらならなくなります。以前のスターバックスが、コーヒーを売っているのではなく、「サードプレイス(自宅とオフィスの間にある3つ目の場所)」を提供するというコンセプトで、それまでのコーヒーショップとは別世界の消費者からの圧倒的な支持を受けたのと似ています。

以前はポータブルに音楽を聞くための端末として圧倒的な地位にあったソニーのウォークマンが、アップルのiPhoneにシフトされてしまったように、トヨタの車がテスラの「クールな移動手段」にリプレイスされる可能性は決して低くないと思います。

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