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日本の学歴には、これから価値がどんどんなくなっていく。以前からそう思っていますが、日本経済新聞社が学歴と生涯賃金に関して興味深いデータをグラフにしています。東大、早稲田、慶応、一般大卒の生涯賃金の比較です。試算しているのはAFGという会社です。

まず、このデータはかなりアバウトな計算結果であることに注意すべきです。試算方法は、それぞれの大学の2015年の卒業生の就職先およびその人数(上位20社まで)を調べ、それらの企業の推計賃金データを基に、生涯賃金を推計するという方法です。

賃金の推計は、データが取れる一部上場企業のみが対象なので、外資系企業や非上場企業、公務員、医師、弁護士などは対象外。つまり、その大学の卒業生がたくさん入社している会社の社員の平均を計算しただけのデータです。日本の有名大学を卒業して、「一流企業」に就職したらどうなるかを過去のデータで計算しただけです。

生涯年収は、早稲田が3億8785万円、慶応が4億3983万円、東大は4億6126万円となり、大卒の男性平均より1億~1億7000万円も多いという結果ですが、別に驚くべきことではありません。有名大学を卒業すれば、一部上場企業に入れる可能性が高くなりますから、平均的に見れば生涯賃金が高くなるのは当然です。さらに、現状では、テレビキー局、大手商社、大手損保などは、平均生涯賃金が5億円を超えていますから、これらの会社にたくさん就職すれば、平均値は上がります。

この数字からわかることは、有名大学を卒業すると、一部上場のようなこれまでの社員の平均賃金の高い大手企業に入る比率が高くなり、全体として生涯賃金が高く見える。ただそれだけのことです。生涯賃金4億円としても22歳から40年間での累計ですから、「年収1000万円」。低いとは言いませんが、世の中にはもっと稼いでいる人がたくさんいます。

例えば「年収5000万円」を超えるような人たちは、学歴など関係ない人がほとんどです。まず、一部上場の大手企業に就職したら、社長にでもならない限り、年収5000万円を超えることはありません。このレベルに到達するには、外資系企業で特殊なスキルを活かした仕事をするか、医師や弁護士の中で能力の高い人、あるいは自分で起業するかベンチャーで働いて会社が大きく成長するか、3つのパターンしかありません。

このような人たちにとって学歴よりも大切なのは、自分にしかない「スキル」、それをマネタイズする「センス」、そして時代の流れに乗れる「幸運」の3つではないかと思います。

有名大学を卒業して、大手企業に入る。その時点で、安定は確保できたと思うかもしれませんが、逆にアップサイドの可能性は極めて小さくなります。自分の力で億単位のお金を稼ぐ人には、なれないことが、ほぼ確定します。

そして、安定していると思っていた就職先企業も、時代の変化に取り残されれば、自分が仕事をしている40年の間に衰退していきます。40年前の名門企業が今どうなっているかを考えれば、会社に人生を賭けることが、安定ではなくリスクであることがわかります。

そう考えると、学歴を活かして有名企業に就職して「勝ち逃げ」を狙う戦略は、生涯賃金最大化という観点からは、賢明とは言えないと思うのです。

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