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昨日は五反田で資産運用セミナーにゲスト参加しましたが、そこで議論になったのが「現物不動産を買うより、REITの方が良いのではないか?」という疑問です。

REITとは不動産投資信託という金融商品。ファンドとして多くの投資家から資金を集めて、それを規模の大きな不動産に分散投資し、入ってきた家賃から経費を差し引いて投資家に分配する仕組みです。不動産が投資対象という点では同じですが、投資のリスクという点からみると、現物不動産とREITは別物というのが私の意見です。わかりやすくするためにポイント毎に比較してみましょう。

1.投資対象
同じ、不動産でも投資対象が異なります。現物不動産の投資対象は、通常は居住用マンションになります。これに対してREITの場合、居住用に投資するものよりも、オフィスビルや商業物件へ投資するファンドが中心です。また、REITの場合、ファンドのサイズが大きいので、1つの物件への投資金額が大きく、複数の物件に分散して投資をしています。リスク分散という点ではREITにメリットがあります。

2.流動性
REITは、株式と同じように上場しており、売買が自由で流動性が高くなります。実物不動産は中古ワンルームは比較的流動性が高いですが、それでも現金化するのに最低1週間程度はかかります。上場していないので、リアルタイムで価格を知ることもできません。流動性はREITの方が高くなりますが、価格変動も大きくなり、「歪み」からの超過収益は狙いにくくなります。

3.レバレッジ(信用のマネタイズ)
現物不動産は国内では借り入れによって資金調達可能です。一棟ものであればフルローンが付くこともあります。また2000万円前後の中古ワンルームマンションも頭金10万円、諸費用込で70万円くらいの自己資金から投資でき、レバレッジをかけることは可能です。REITは投資法人が借入を行っていますから、それ自体に2倍程度のレバレッジが既にかかっています。通常は現金購入になりますから、それ以上のレバレッジはかけられません。金利差からの収益は現物不動産の方が大きくなります。

4.収益性
REITの分配金利回りは3%~6%とファンドによってバラツキがあります。現物不動産も表面利回りは5%~8%程度とこちらも物件によって上下します。ただし、現物不動産は、家賃収入から管理コストや固定資産税がかかります。1%程度は実質リターンが下がると考えた方が良いでしょう。逆にREITはレバレッジ2倍がかかった状態でのリターンですから、利回りとしてはあまり高くないと考えることもできます。現物不動産で半分を借入で購入すれば、表面利回りは10%前後まで引き上げることは可能だからです。

また現物不動産は、未公開物件にアクセスすることにより、「歪み」からの超過収益が狙えます。上場しているREITが投資できないような物件にもリスクを取って投資可能ですから、その点もリターンに寄与します。

5.タックスメリット
REITは金融商品ですから、株式や投資信託のように値上り益や分配金に対して約20%の譲渡益課税となります。現物不動産は、家賃は所得税として課税対象になりますし、5年以内に売却すると約40%のキャピタルゲイン課税となり、5年超でも約20%の税率となります。

現物不動産のメリットが大きいのが、相続税です。相続税評価額はREITは時価になりますが、現物不動産は時価の3割程度まで圧縮できるケースが多くなります。不動産の評価方法が、時価ではなく路線価と固定資産税評価額で算定されるというルールがあるからです。

どちらの投資対象にもメリット・デメリットがありますが、大切なことは2つの違いを理解したうえで、納得して商品選択をすることです。私はREITはすべて売却し、今は現物不動産しか保有していません。その理由は「歪み」と「レバレッジ」です。割安な物件を探し、金利差を使って安定したインカム収入を得られるようにする。「お金を借りる力」を持っている人は、それを資産運用に活用することで、「自分の信用のマネタイズ」ができる。

信用があるのにそれをマネタイズしない人は、資産の有効活用という点では、普通預金に現金を大量に滞留させている人と同じです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。