SHINOBY'S WORLD SHINCE: SEPTEMBER 30, 1996




エッセイ

エッセイ 1999年11月

1999年気がつけば秋

99.11.21.
<今日の一言>

仕事が落ち着くとプライベートが悩ましい。平穏な生活にはなかなか戻れないものです。

投資信託

10月の手数料自由化によって、個人投資家の株式投資が変りつつある。従来の営業マンによるセールスや店頭での投資相談を使って投資を行う人がいる一方で、営業マンの煩わしさを嫌い、自分のペースで一日中いつでも注文を出せ、しかも安いオンライン証券会社を使う人が爆発的に増えている。

オンライン証券会社は店頭での投資相談と言ったサービスは無い。しかし、自分で気になる銘柄のチャートを出したり、株価のチェックをリアルタイムで行ったり、注文を夜中に出したりと自分のペースでできることが売りである。しかも手数料は比較にならない位安い。

個人投資家のこのような地殻変動はいずれ投資信託にも波及すると考えている。なぜなら個人の資産運用の鍵はいずれ株式から投資信託にもある程度移行せざるを得ないからである。個別の株式の価格変動に一喜一憂する投資ではなく、資産の金額と将来の資金計画を考えた上でのアセットアロケーションの中から安定したポートフォリオを作り出すには投資信託という仕組みが必要になる。プロの運用ノウハウと少額での分散投資を可能にするという2つの利点をもった商品だからである。

従来、投資信託とは証券会社の手数料稼ぎの手段の一つだった。販売手数料を稼ぐためには値上がりしている投信を売却させて、新しい投信を買わせる営業をするのが一番効率的であった。かくして、日本では運用パフォーマンスが良いと解約が増えるという投信のパラドックスが発生した。一方で値下がりした投信は塩漬けになっていた。

投資信託の理解を妨げるもう一つの理由は平均信託金制度という訳のわからない仕組みである。そもそもこういった仕組みを理解している人はほとんどおらず、また不公平な課税によって本来の運用利回りが達成できないという問題が起きている。

間接金融から直接金融への個人資産のシフトは始まったばかりである。その動きに必要な器である投資信託を個人投資家に使い勝手の良いものにするためには、優れたパフォーマンスの商品をわかり易く販売する証券会社の役割が必要とされる。現状の手数料体系と複雑な仕組みという所与の条件の中で、個人投資家の方に投資信託への理解を深めてもらうにはどうしたら良いのか。悩ましい命題である。

 

99.11.1.
<今日の一言>

仕事の忙しさを理由にHPの更新を随分さぼっておりました。ようやく人間らしい暮らしに戻りつつあります。

夜の郵便局

ベンチャー企業というのは一般に社員の数は少ない。小人数だからこそ一人一人が色々なことをこなす多能工にならないとやっていけない。会社では一応商品開発部長という立場にある私も、ある時は会議室で袋詰め作業をやったり、4トントラックを深夜に運転したりと大企業のサラリーマンにはない多くのことを経験してきた。

郵便局が24時間開いているということを知ったのもつい最近のことである。会社に郵便の箱が置いてあって、入れておくだけで勝手に仕分けして出してくれるようなところにいるとわからなかったことが、自分で郵便を出したりするとわかったりする。速達の最終便は何時なのか、簡易書留と配達記録は何が違うのか、そんなことも自然に覚えてしまった。

深夜の郵便局は不思議な人に出会うことができる。内容証明郵便で債権譲渡の通知を何通も作成している人が隣にいた。黒いシャツに茶髪の3ピースのスーツ。どう見てもその筋の人にしか見えないが、真剣に書類のチェックをしている。見た目とやっている作業のミスマッチが不思議だったのだが、向こうから見ても深夜に郵便代を1万円近く払って大量の送付物を持ち込む私服の中年というのも理解不能なのかもしれない。(99.11.10.)

ゴミ投資家

メディアワークスで編集長をされているUさんから「ゴミ投資家のための人生設計入門」が送られてきた。ゴミ投資家シリーズの最新刊である。まだ読了していないが、今回はかなり毛色の変った仕上がりになっているようである。

ゴミ投資家シリーズは前から書いているように、現場主義に基づいた綿密な取材をしていることがわかる良心的な本である。ゴミ投資家というタイトルによって何だかちょっといかがわしい内容ではないかと思われ損をしていると個人的には思っている。

今回は個別の投資に関しての税金や手数料のからくりといった今までのシリーズが得意としてきた分野を不動産、保険といった商品にまで広げ、経済的な独立を如何に成し遂げるかについてのヒントを呈示している。経済的な独立があってこそ自由で最高の人生を手に入れられるという主張である。

投資や利殖に興味を持つ人は多いが、税金や手数料によって実際にどの位コストが掛かっているかを理解している人は少ない。例えばクーポン5%のアメリカ国債を日本の証券会社で買った時、為替の手数料、クーポンに対する税金、売買の価格(オファービッド)でどの位実質の利回りが下がるか考えている人は殆どいない。投信を持っている人で投資信託の平均信託金のからくりを説明できる人はこれまた殆どいない。

このような日本の個人投資家が知らずにいた事実を一つづつ明快に説明してきたのがこのゴミ投資家シリーズである。ゴミという言い方には個人投資家が今まで受けてきた様々な不利益に対する皮肉がこめられているのであろう。

人生の目標はお金を貯めることではない。お金持ちが必ずしも幸福でないことを見れば明らかである。しかしお金が無いと出来ないことも多い。自己実現の手段としての懸命な投資を考える為のテキストとして、日本では恐らく初めてのまともな解説本なのである。

日本の不合理な税制や理不尽な手数料というハンディの中で合法的に投資を考える時、役に立つのはモダンポートフォリオ理論などの投資理論ではなく、コストを如何に下げるかという知恵である。リスク調整後の期待リターンの一致という投資の世界における平等は日本の市場では未だに実現していないからである。


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