SHINOBY'S WORLD SHINCE: SEPTEMBER 30, 1996




エッセイ

2002/12/07 (土)

黄金の羽根の拾い方

橘玲の「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門」を読んだ。著者は「ゴミ投資家・・・」シリーズを書いてきた人。タイトルとは異なり、この本は人生設計だけの本ではない。日本社会で今進行している恐ろしい現実についても具体的に描かれている。

前半の資産運用の話は具体的な運用アドバイスが書いてあるわけではない。日本人の資産設計に一番欠けている、不動産と保険についてがメインテーマである。この2つは通常は投資とは考えられず、日本人はあまり疑うこともなく購入するものである。(最近は変わってきたが)

不動産について橘氏は、日本人は投資に対して大きなリスクを取って投資をしてきたという。それは、住宅ローンによるレバレッジをかけた投資のことである。不動産価格が右肩上がりの時代、土地の値段は下がらないという「土地神話」を拠り所に多くの人が住宅ローンを組んで家を買った。20%の頭金で不動産を取得するのは5倍のレバレッジをかけて不動産投資をすることである(1000万円の資金で5000万円の不動産投資をしているということ)。つまり住宅ローンは株式の信用取引と同じ。投資対象が不動産か株式かの違いだけ、という訳である。

保険については無駄な特約によって見えないコストを知らないうちに払わされているという。コストを抑えて保険料が圧倒的に安い全労災、日本生協連、全国生協連などが経済紙で取り上げられないのは大手生命保険会社が広告の大口クライアントだから、だという。

後半のパート3からは国のシステムの破綻が避けられないことを具体的に描いている。

例えば、失業保険。失業保険は65歳未満なら申請できるため、大企業の部長を最後に60歳で定年退職した人も申請している。結婚を理由に会社を辞めて、家事手伝いをしている人も結婚までに失業保険を申請する、雇用保険のある会社に6ヶ月だけ勤務して辞めた若者も90日の需給資格を申請する。もちろん受給する資格があるのであるから、当然の権利である。しかし彼らは失業保険が保護すべき本当の失業者と言えない人たちに金をばら撒く仕組のツケは、関係のない人たちにも国家財政の悪化という形で影響する。

年金制度、健康保険、も状況は同じである。支払っている人と受け取る人の歪みが発生して放置していれば破綻するのは時間の問題になっている。システムに魅力が無くなれば払い損だと思う人が払わなくなり、システムが更に破綻への道を歩む。実際に自営業者の中には国民年金を払わない人もいるという。しかし社会保険料や年金、失業保険料を源泉徴収されているサラリーマンはシステムから逃れることはできない。沈むのがわかっている船から勝手に降りられない仕組になっているのである。

この本はタイトルと内容が少しずれており、たくさんの内容を詰め込んでいるため、全体としての統一感に欠けるという難点はある。しかし、個別の話は具体性のある独自の視点で描かれており、お金を出して買う価値は充分にあるお値打ち本であると思う。

<最近の一言> また週末は仕事です。今度は金沢。せっかく地方にいっても仕事が終わるとさっさと日帰りなので、何だか東京から離れた実感がいつもありません。


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