■ 小倉昌男「経営学」
小倉昌男の経営学(日経BP社、1400円)を久しぶりに読み返した。ヤマト運輸を日本一の宅配便会社に育てた過程を丁寧に説明しているが、古さを感じさせない内容にこの本の普遍的な魅力を見たような気がした。
全体を読んで思うことはヤマトの小倉社長は経営学の理論を実際の経営に取り入れ驚異的な成功を実現した日本では稀有な経営者ではないかということだ。
一番印象的なフレーズは「戦略レベルの経営者」と「戦術レベルの経営者」の違いである。戦略レベルの経営者とは会社の現状を正しく分析でき何が一番で何が第二かを論理的に説明でききちんと指示できる経営者。何でも一番大切といっているのは本当の一番が無いということ。そんな経営者は戦術レベルの経営者である。例えば何でも早くやれ、と指示して優先順位をつけられない経営者は多いが、彼らは所詮戦術的経営者に過ぎないということである。
マーケティングにも理論がある。吉野家に学びメニュを絞り込んだ。これは無意味な多角化という多くの会社が陥った過ちを避ける賢い戦略である。サービスの差別化を考え「翌日配達」というニーズに絞り込んだ。マーケティングでいう集中の法則の実践である。これはフェデラルエクスプレスの成功なんかを研究していたに違いない。
さらに「サービスが先、利益が後」という社内スローガンの徹底。これは戦略の社内共有化に貢献している。そして宅急便が成功しても手綱を緩めないダントツ3ヵ年計画による駄目押し。経営者としての隙のないスタンスが感じられる。
組合との良好な関係。熟慮の末に決定した三越、松下との取引の解消。筋が通らないととことん闘った運輸省との対立。すべてが地味ではあるが論理的にきちんと進められている。プロの職人の仕事のようないぶし銀の世界である。
老害を撒き散らしながら地位に執着するオーナー経営者は多い。あるいは逆に藤田田(デンと発音してください)をはじめ私が尊敬する経営者でも最後にほろ苦い思いをしながら経済界を去るケースもある。経営の引き際は難しいものであるが、小倉さんには当たり前の簡単なことのようだ。信念のある人は強い。
<最近の一言>5月9日に販売開始のこの商品に魅せられています。去年買ったNWウォークマンからスイッチすべきかどうか、真剣に悩んでいます。