SHINOBY'S WORLD SHINCE: SEPTEMBER 30, 1996




エッセイ

2003/08/26 (火)

全体と部分

企業のロゴのデザインなどを手がけているデザイナーの方と仕事でご一緒する機会があった。

ロゴのデザインなどというと何だか適当に形を考えて面白いものを作るだけの簡単な仕事のように思えるが、実はそうではない。

芸術家とデザイナーの違いはデザイナーは依頼主(クライアント)の希望を満足させなければならないという「着地」のあるビジネスであると言う。自分のデザインが世に出た時の世間の評価、日常の中での存在感を計算しつくす必要がある。美術館に飾られる芸術品との違いはそこにあるのだろう。

彼がかつて有名な女性雑誌の創刊号の表紙の担当をした時、白黒のモノトーン配色で雑誌名のロゴだけを入れたシンプルなデザインをしたことがあるという。発売前のクライアントの評価は目立たない地味で暗い作品と散々だったという。

しかし実際に書店に並ぶとその雑誌だけが他の雑誌を背景に一番目立っていた。他の雑誌は他より目立とうと活字や色を詰め込んでいるものばかりでどれも同じような派手な作りになっていた。そんな中にモノトーンの雑誌は1つしかなかったのである。

雑誌の表紙のデザインというとその雑誌が全体である、と考えて世界を作ろうとしてしまう。しかし、日常の中ではそれは単なる一部分に過ぎない。

自分が全体の一部分であるという認識の上で相対的な位置を把握することによって自分の存在理由をより明確にすることができる。

世の中はすべて相対的なものである、ということを再確認することができた。


ホームにもどる メールを送る © SHINOBY