■ コールオプション
1999年12月末に日亜化学を退職した後、米カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校教授に転身した中村教授が日亜化学から発明の対価として約200億円を受け取るという判決が出た。実際には発明の価値は1200億円。そのうちの中村氏の貢献は600億円と査定されていた。
青色LED製法の特許が中村教授から日亜側に譲渡された際の相当対価についての審理の結果である。
特許法三十五条では、会社側は契約や勤務規則などに基づき、職務上の発明の特許権を発明者から譲り受けることができると規定している。その場合、発明者が相当の対価の支払いを受ける権利を認めている。
私にはこの特許の価値を理解する知識もない。しかし200億円という数字は対価として適当なのだろうか。
社員として冷遇されていたという事情、あるいは退職後に会社側が中村氏を訴えた、といったようなことからの彼の心情は充分理解できる。日本の組織には馴染まない、つまり日本の企業においては評価されにくい人材であることも想像できる。しかし社員という安定した立場を確保しながら研究をし、うまくいったら数百億円の報酬をもらう、というのはリスクに見合ったリターンなのだろうか。
例えば社内ベンチャーで会社から出資をしてもらい事業を始めた人がいるとする。会社の100%出資で彼は失敗しても元の会社に戻れる。もし事業が成功してその会社の企業価値が1200億円になったとする。その時彼は会社に対して200億円を要求するするのは妥当なのだろうか。
失敗したときの安全ネットをしっかり用意しながら、うまくいったら安全ネットの無い人たちと同じ待遇を、というのは虫が良すぎる。これは損失を一定に抑えながら、利益は青天井に広げることができるコールオプションをもらったのと同じである。
このような社内での研究成果に対する評価は自分で会社を立ち上げた人たちに比べ低くなって当然である。それはリスクを取らない人にリスクプレミアムが与えられるという不公平が認められれば、リスクを取る人がいなくなってしまい社会にとっての損失になると思うからである。