SHINOBY'S WORLD SHINCE: SEPTEMBER 30, 1996




雑記
この論文は95年の夏に社内懸賞論文に応募した元原稿を会社名とフォント等のレイアウトだけ変えて掲載したものです。当時はまだビッグバン構想もなくインターネットも一部の人が使っていた時期。ウインドウズ95もまだ発売されていませんでした。そういった訳で若干時代遅れの記述もありますが、あえて改訂しないでそのままにしました。人の会社の話なので読みにくいとは思いますが、ご意見・ご感想あれば是非お願いいたします。

赤貝信託銀行がいまなすべきこと
〜より魅力的な企業を目指して〜

もくじ

エグゼクティブサマリー

現状認識

規制緩和により赤貝信託がどのような方向を進むのに関わりなく、金融業界は再編が進むであろう。また不良債権問題がどの金融機関にとっても解決すべき課題となっているが、根本的な解決を行うところはなく、公的な金融機関救済システムが発動されるまでの時間稼ぎを行っているように見られる。赤貝信託銀行も他の金融機関同様不良債権問題は経営に大きくのしかかっているが、より重要な課題は不良債権問題に片がついたとして、その後ビジネスとして何を中心に据えるかの具体的ヴィジョンを明確にすることである。

日本の社会は重大な転換期であることは疑いなく、パラダイムシフトが確実に始まっている。従来の企業システムでは対応できないきしみが各所に発生しており(雇用、組織、規制、技術、文化)、この変化にいかに対応していくかが企業としての存続と決定するといっても過言ではない。

対応

簡潔にいえば存在価値のある企業になることが必要。
存在価値とは他の企業では提供できないサービスを提供する、または他の企業と同様のサービスをより正確に、迅速に、低コストで提供できることである。今までの2番手戦略・横並び戦略は徐々に通用しなくなるであろう。
そのためには大きく分けて次のような改革が必要と考えている。

  • 組織 分権化・フラット化が必要。外部との接点の多い組織にする工夫を。
  • 人材育成・人事 多様化・専門化が必要。待遇については結果の平等より機会の平等を。
  • ビジネスエリア 大胆な絞り込み。参入・撤退のルール作り。デパート型からブティック型へ。

具体的施策

従来行ってきた各部からの寄せ集めによる経営計画は今までの事業を前提としたその延長線上にあるものであり、直面する根本的な問題の解決にはならない。官僚主義・縄張り意識の中では部門間のエゴイズムがぶつかりあうだけで全体の利益につながるとは限らない。現状の局部的・短視眼的利害関係から離れて考え、自由に意見が出せ、密室ではなく社員に公開された環境で施策の検討を行うことが大切。

アクションプラン策定委員会といった現状の組織を離れたプロジェクトを例えば20代・30代・40代といった年齢別に編成し具体的な議論を上下関係の枠を越えて行うことを提案したい。組織・人事といった経営上重要な事項について議論した上でそれらの内容を全社員に開示し、最終計画を経営会議で決定するといった方法で行い、従業員にも参加意識を持たせ、経営サイドに対するチェック機能を持たせる新しい意志決定プロセスとして機能することが期待できる。

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本文

  1. はじめに
  2. 赤貝信託銀行の先行きを楽観視している人はほとんどいないであろう。社会問題化しつつある不良債権問題は赤貝信託銀行のみならず金融機関全体の大きな問題である。しかし赤貝信託にはそれ以上に根本的な問題があるように思えてならない。それは現状の不良債権問題に目処がついてとしてその後どのようなビジネスを展開していくかについて明確なヴィジョンがないことである。しかも多くの従業員はこういった問題に真剣な関心を示さない。従業員にとって当面は人員削減もなく給与は上がらないにしても物価の下落を考えれば不満はない。社内の競争もあまりなく、結果の平等がおおむね成立しており現状の待遇にはとりあえず満足している人は多い。しかしこのままではゆでがえるになってしまうのではないのかと漫然と不安を持って人は多いと思われる。日本の社会の急速な変化に気付いている人ならば、赤貝信託には組織の歪みがいづれ表面化し、それに気が付いた時にはもう手後れになっているリスクを考えるはずである。

    ではいま何をすべきなのか。この問いに自分なりの答えを出すことが今回の目的である。結論からいえば、短期的な経営計画を練り直してみても根本的な解決にはならない。従来の延長線上で考えることは日々の業務では有意義かもしれないが、根本的な変化を作り出すことはできない。組織の肥大化を解消し、自主的に完結できる組織に権限委譲を行う体制にすること、社内の価値観のズレと全体に漂う無力感をいかにコントロールしていくかといったことを考える必要がある。

    個々の事業分野別の具体的戦略以前の入口の部分の議論を十分に行う方が重要である。ここでは個別論には踏み込まずに具体的な現状改革案というよりは、社会の大きな変化の流れの中での進むべき方向性といった意見を作ってみたい。

    赤貝信託の現状に改良の余地があることは次の例を考えれば明らかである。もし赤貝信託と青柳信託が一つの信託銀行になるとした場合、困るのは誰であろうか。預金をしている個人顧客は赤貝の名前に愛着があれば心理的抵抗はあるかもしれないが、合併により店舗が増え利便性は向上するので歓迎するのではないか。法人の取引先も合併によりマンパワーが増加し従来以上のきめ細かなサービスが受けられるなら歓迎する。反対するのは経営陣と従業員の一部(要するに仕事を失う可能性のある人)であろう。

    つまり他の金融機関と差別化できるサービスを提供できない限り赤貝信託は単独で事業を続けていく価値はないということである。にもかかわらず合併しないのは、規制による保護により一般事業会社なら当然淘汰されている金融機関でも生き残っていられるからである。

    規制の中での非効率は今後の金融自由化の中で徐々に改革されていくと思われるが、それに加えて社会全体の中で時代の流れを見ると、今まさにパラダイムの変換期であることを感じさせる動きが次々発生している。例えば次のような変化が起こっている。

    1. グローバル・流動化
    2. 世界経済が一体化するにつれ、日本の企業社会も今までの最も成功した社会主義と皮肉られるような結果平等主義から必然的に機会の平等に移行していく。その中で危機感のない従業員、結果の公平にばかりこだわる組合、懸案事項を先送りにする経営は変化していかざるを得なくなる。閉じられた世界での現状の既得権を守る時間稼ぎはいづれ通用しなくなる。世界との垣根が低くなることは競争の激化を意味する。

    3. 技術革新
    4. 金融機関においても技術革新(コンピュータ、通信ネットワーク)が今までの業務の進め方を大きく変化させることは確実である。例えば電子メールは単にペーパーレス化をもたらしたり、従業員間のコミュニケイションを増大させるが、それに留まらず意思決定プロセスを仕事の早い人のスピードに合わせていくという根本的な変化を生む可能性が高い。こうした技術革新が広がっていく以上、他社に伍していくためには意志決定におけるスピードが今まで以上に要求される。

      また金融業界でも次のような変化が発生している。

    5. 規制緩和
    6. 前述の通り金融業界も大蔵省の指導の下での護送船団方式から自由競争へ移行しつつある。また三重野日銀前総裁がつぶれる金融機関があってもいいという発言を行ったことからもわかるように今後金融機関も現在のような高賃金と低生産性を続けていけなくなるのは時間の問題である。特色のない非効率な金融機関は淘汰されていくであろう。(一部では動きが始まっている。)

    7. 不良債権問題
    8. 繰り返しになるが、不良債権問題が社会問題化しつつあり、それ自体に関心が集まっているが、この問題は金融機関の淘汰のための第一次選抜試験のような役割をはたすことになるのではないか。つまり今までの規制の中でのみ生き残ることができた企業を淘汰し、自由競争の金融業界で生き残る権利を賭けた問題であるように見える。もちろん所謂バブルの時期のビジネスの方法についての反省は必要であるが、大切なのは大学入試と同じで二次試験、つまり不良債権問題が片ついてから先にどのような事業展開を行うかのヴィジョンがあるかどうかである。

    9. 金融業の概念の変化
    10. 金余りの現状では銀行以外にも資金の出し手は増えている。また大企業の中には銀行よりも高い格付けを持つところが増え、資本市場から銀行より低コストで資金調達する能力を持ち、情報力でも金融機関を陵駕する場合が珍しくない。受信分野でも証券会社の貯蓄性預金が利回りの安全性と利回りの高さで資金を吸収している。従来銀行の独占であった分野に他業態が参入してきており銀行は決済機能しか差別化できる要素をもたなくなっている。

      これらの現状認識を踏まえ、赤貝信託銀行の問題点について次章以下でまとめてみたい。

  3. 赤貝信託銀行の現状と問題点
  4. 赤貝信託銀行の根本的な問題点として以下のような点が挙げられる。

    1. 経営理念の欠如
    2. 事業の拡大の結果として組織が巨大化し多くの事業分野が存在し、具体的に何をする会社なのか一言で説明することが難しくなってきている。業務全体をまとめ一定の方向性を示す経営理念が存在しないことが従業員が業務に自信を持てない原因の一つになっている。例えば赤貝信託の利益を極大化するという経営理念であれば目標が明確になるが、浮利を追わずという理念を同時に持ち出されると矛盾が発生する。極端な例を挙げれば、為替のディーリング・株式の運用は会社の利益になるが浮利なのではないか。このような矛盾を明快に説明できなければ、中長期的に従業員の動機付けに影響を及ぼす。しかしこのような矛盾を解決するために一般的な経営理念、例えば『高度な金融サービスを通じて世界に貢献する。』といった紋切り型では従業員や社会に訴えるものがなく作っても作らなくても同じであろう。他の企業と何が違うのかを明確に示すキーワードを従業員に示し、行動の判断基準として位置付ける必要がある。組織の問題と関連するが、一つの経営理念でまとめられない場合は逆に組織の分割が必要であることを暗示しているともいえる。従業員を一つのベクトルにまとめあげ、社会に明確に存在意義をアピールできる経営理念が求められている。

    3. 人事の問題
    4. 社風は企業の組織・人事評価と関係している。最近特に社内の官僚化が進んでいるように感じられる。リスクを取ることに消極的になり、意思決定のできない体制になっている。このような社風は経済の情勢といった外的要因もあるが、人事の問題に帰結するように思われ、現状の人事評価体系に限界があることを示していると思われる。次のような点に問題が発生していると思われる。

      第一に明確な期待事項の明示と評価の方法そしてそのフィードバックを客観的に行う方法が確立していないため、明確で公正な評価ができず中途半端になってしまっている。その結果仕事の達成より、人物の好き嫌いが評価に反映しがちになる。

      第二に部門によって軽重をつける必要があるにもかかわらず、行われていない。例えば不動産営業部で手数料収入を1億円稼いだことと、資金証券部で為替取引で1億円稼いだこと、システム部門でコンピュータ導入によって経費が1億円削減されたこと、以上の3つはどれが最も評価されるのであろうか。仕事のリスクとリターンが部門間で不公平になっていることがリスクを取りにくい状況を作り出している。

      第三に機会の平等より結果の平等になっている結果モラルの低下が起こっている。結果の平等が望ましいとする企業風土が根底にある。何もしなくても評価に大きな影響がなく、結果としてリスクをとらないほうがよいという判断が働き、楽な会社になってしまっている。

      第四に従業員組合の役割にも問題がある。現在の結果の平等を目的とする活動を見直す必要があるのではないか。

      組合は人権確保、労働環境が守られているかの監視、総枠としての労働分配率の確保、年金・従業員預金等の運営の監視といったマクロの部分に特化し、ミクロの部分(個人へどう配分するか)については一定のレベルさえ守られれば会社が考えるといった役割分担をしたほうが効率的ではないかと思われる。

      第五に若手と中高年の会社に対する意識の違いが挙げられる。例えば会社をあと5年で退職すると思っている人は自分に痛みをもたらす可能性のある会社の根本的な改革に賛成するであろうか。自分が勤めている間だけ問題を先送りにすればいいと考えてしまうのは誰でも自然なことではないか。逆に若年層は会社の根本的改革が行われずに衰退して行く事態となれば能力のある者から人材流出が始まる。会社とは一つの会社に一生勤務するものではなく、自己実現を行うための手段という割切りが多くの若年層の捉えかたである。このような世代間の意識の違いを企業にとってプラスになるようにインセンティブを付与して行く工夫が求められる。

      第六に従業員の価値観の多様化に現状の人事制度が対応できていない。例えば勤務時間は短く給料も少なくていい人や総合職から事務職に転換したい人を有効に活用するシステムがない。つまり昇格・余暇・給与の関数が人によって異なるにもかかわらず、現状のメニュは総合職・業務職・事務職・専門職といった限られたものしか提供されていない。

      また人事ローテーションについてもメリット・デメリットを考え直す時期にきているのではないか。好きで仕事をしている人がローテーションによって仕事が変わることは会社の損失になる。また専門職制度があるといっても総合職に比べ待遇が必ずしも高いとはいえず、対応が求められる。

    5. 戦略的事業分野が特定されていない
    6. 従来は原則としてフルライン戦略を取り、都市銀行上位行を意識した事業分野の展開を行ってきた。しかし従業員数・店舗数・顧客数で大きく差がついている現在、フルライン戦略を見直し効率化を進める必要がある。そのためには当社の事業基盤の内強みはどこにあるのかを判断する基準・組織を明確にする必要がある。もちろん安定した雇用を続けることも経営者の責任の一つであるから、安易な事業撤退と従業員の減少といったことは行いにくい。しかし中長期的にみれば不採算部門を雇用確保のため温存しても時間稼ぎにすぎず、戦略分野に戦力の重点配分を行う方が従業員にとってもプラスである。

  5. 解決方法
    1. 企業理念について


    2. 企業理念は事業展開と絡む問題であり、理念だけを決定しても実際に理念に沿ったビジネスが行われなければ意味がない。例えば信託という切り口に特化していくのであれば、信託の器を活用した高度な金融サービスを提供するといった理念が考えられる。逆にいえば企業理念をまとめられないようなビジネス展開を行っているのであれば、まとめられるような事業単位で分離するほうがコンセプトがはっきりして従業員が方向性を明確にすることができる。後述するようなプロジェクトによって企業理念を策定し、ビジネスも理念に沿って進めていけるような体制にすることが必要である。

    3. 人事について


      1. 評価方法
      2. 第一に悪平等の是正が最重要課題である。公平な待遇というものが結果の平等ではなく機会の平等にならなければ活力は生まれない。機会の平等をいかに作り出すかと公平な評価をどのように行うかが焦点になる。機会の平等ということでは、部門間の評価をどのように行うかの検討が必要である。具体的には仕事は大きく分ければリスク型の仕事とノンリスク型の仕事に分けられる。リスク型とは運用・営業といった業務で投入した経営資源に成果が必ずしも比例しない仕事である。一方ノンリスク型とは事務セクション・システム開発といった投入した資源に成果がある程度比例する業務である。この大きく分けて2種類の業務にどのように配属を行い、評価をいかに行うかは今後の人事制度の大きなポイントとなるのではないか。

        また別の問題として評価方法が減点法に近くなっていくことで、意思決定をしないことによるデメリットのない評価基準になっているという問題についても考える必要がある。《とりあえず何もしない > リスクを取る》という評価体系ではリスクを取るインセンティブが発生しない。

      3. 採用体系
      4. 入口の部分では総合職・事務職については新卒採用がほとんどとなっているが、最適な方法であるか見直す必要がある。定時採用は多くの学生を客観的に比較しながら採用でき、一定のレベルが維持できる利点がある。しかし一方で将来性にポイントをおいた潜在的能力を短期間に判断し採用するためリスクが大きい。むしろ中途採用の比率をさらに上げて、リスクを軽減する方が社内の競争促進・外部の文化導入といった利点もありメリットがあると思われる。そのために中途退社入社しやすい体制(中途採用の定例化・待遇面での新卒との平等)を社内外にディスクローズして行くことで所謂プロパーとキャリアが人数的にも完全に対等になる状態を目指すべきである。また退社した社員の再雇用といった柔軟で開かれた人事制度を行うことにより企業イメージの向上、自由闊達な企業風土の育成が行われ、より優秀な人材の採用が可能になることを知るべきである。

        従業員の価値観は多様化してきている。したがって多様な価値観に対応できる、採用体系については多様化を進めるべきである。例えば休職制度を大胆に導入してはどうであろうか。例えば1ヶ月間給料はいらないから毎年休暇を取りたいという優秀な従業員がいたら、その人物を会社で生かせる制度は作れないだろうか。また男性で総合職から事務職に職掌転換したいとしたら認められるのであろうか。このような従業員の多様な価値観に現状の人事制度は必ずしも対応できているとはいえず、能力のある人材を雇用上の制約から活用できないことによる機会損失は大きくなってきていると思う。

      5. 人材育成
      6. 人事ローテーションは果たして必要であろうか。確かに営業セクションであれば顧客との癒着を防止するということもあるし、業務のマンネリ化防止ということもあろう。しかし業務毎の専門化が進んだ銀行業務において、定期的な人事ローテーションはせっかく築いたノウハウ、人的ネットワークを無にしてしまう危険性を持っている。専門知識が蓄積されたら異動してしまうのは、例えれば野球をマスターしたらサッカーをやらせるような非効率であるように思われる。もちろん本人が新しい業務を行いたいと考え、それが会社にとっての利益になるなら必要であるが、基本的には業務分野については余り変更をせず、シナジー効果のない人事ローテーションは行うべきではないと考える。この問題は新人の配属方法・採用方法にもつながる問題であり、雇用条件の多様化とも関連する。

        ローテーションにより社内外どちらでも通用しない人材を作り上げるより、専門化を進める人材育成を行って行くべきである。それは若年層に限らず中高年についてもあてはまる。世代に関係なく赤貝信託銀行の業務を通じて専門分野を磨き、社内外で通用する知識を身に付けることは本人にとっても会社にとってもメリットがある。したがって研修子会社に従来の研修だけでなく社内人材の再教育を行い外部への売り込みを行う役割を担わることも積極的に推進すべきである。これらの施策によって、社外で通用しないために消極的に会社に留まっているという会社にとっても本人にとっても不幸な状況を少しでも改善するほうが望ましいのではないか。

      7. 従業員の雇用条件
      8. 採用体系は多様化させる方がよいと思われるが従業員の待遇についてはシンプルな方が望ましい。現在のフリンジベネフィットは複雑なシステムであり知らないものが損をすることがあること、必要のない非効率な福利厚生が残っていることからより単純なシステムにすることで解決を図るべきではないか。

        一例を挙げれば、残業申告制は廃止すべきではないか。現在の残業手当は本人の申告性になっているが、所属する部署、上司のスタンス、本人の認識等によって同じ残業を行ったとしても恣意的に異なった時間になる。また家族手当といった本人の業務と関係なく支給される手当は必要であるかも疑問である。家族手当がなければ生活できないのであればともかく、給与水準が高い金融機関において追加的に生活費の補助をする理由は余りないのではないか。また同様の観点から社員の福利厚生施設は廃止すべきではないか。そのような施設がなくても十分な給与水準であるということに加え、特定の時期に社員しか使用せず、非効率であるし、社員にとっても選択の自由がないにもかかわらず料金が安いということで使用しているという側面があること、さらに社外に向かって閉じた世界を形成するのは組織として望ましい状態とはいえないこと、といった点からも存続させる意義は余りないと思う。社宅についても従来は会社の含み資産の形成と福利厚生の一石二鳥を狙える手段として機能してきた。その前提として不動産の右肩上りと劣悪な住宅事情があった。現在では私生活まで会社のカルチャーに染めてしまう弊害がより大きくなっている。更にいえば社員食堂についてもバウチャーシステム等の選択の自由のための機能ができつつある。食堂を作るよりオフィススペースの拡大を図った方が会社・従業員双方にメリットがあるのではないか。

      9. 効率化
      10. より効率的な業務遂行のために以下の提案を行いたい。

        第一に外部委託の有効活用を行うことである。グループ会社でできることは外部化を行い、コスト削減を削減すること、また専門分野でノウハウが必要とされるが、赤貝信託銀行のコアビジネスに成り得ない業務は専門の会社に委託するほうが効率的である。

        第二に生産性の向上のためにジョブディスクリプションの明確化を提案したい。従来日本の企業では曖昧な業務範囲を従業員に示すことにより従業員相互が自主的に補完しあうことを業務で期待されている。しかしこのような方法は人事評価の明確化に馴染まず、専門家を育成するという方針にも反する。同時にマニュアル作りを進めていくことで業務の代替性、規格化を進める必要がある。

    4. 事業基盤・経営組織について
    5. 前述の通り、赤貝信託銀行の多様化した事業分野をすべて把握した上で方針を決定する方式では事業環境の変化を把握したうえで対応して行くことは困難である。ここでは具体案を提示するのではなくここでは以下の3つの基本的な考え方について提案を行いたい。

      1. 権限委譲と経営資源配分のルール作り
      2. 中央集権的な権限体系を分散型にしていく方向が望ましい。純粋本部は全体の収益状況の把握・経営資源の配分を行い実際の事業展開は各部門の判断で行える形の方が柔軟で迅速な経営が行える。経営資源の配分については恣意性を無くし部門間の不公平感を発生させないためにルール作りを行う。

      3. 参入はするが撤退の意思決定ができない。撤退のルール作りと意志決定機関の明確化が重要である。客観的に撤退が望ましいとされた場合でも、実際には該当分野から抵抗が予想される。決定されたことを実行できる体制整備も同時に行う必要がある。
      4. コスト競争力をつけるか、商品の差別化を進めるかのいずれかの方向で自由競争の中で生き残っていけるビジネスを見つけて行くべきである。いずれにしても大切なのは市場原理(マーケットメカニズム)を働かせること。
      組織についてはフラット化を行うべきである。赤貝信託銀行は従業員の高齢化がますます進んで行くが、それに伴い人事のインフレが起こる危険がある。命令系統は一本化しなければ、迅速で的確な意志決定は不可能であり、不必要は階層を作ることは非効率をもたらす。部長ー課長ー担当といったシンプルな仕組みが望ましい。このような組織では中高年の処遇に窮するという意見があろうが、効率的なシステムを作り出すためにはしかたがないことであろう。効率的な組織になって人間関係が悪化しないためには、会社の地位だけが人間の価値を決めるのではないというカルチャーを会社が率先して作り出して行くことが肝心である。

  6. 赤貝信託銀行が魅力的な企業である続けるために
  7. 社会に対して開かれている常識的な企業であるということと市場原理と情報開示を企業内にも取り入れた経営を行うことの2点が赤貝信託銀行の今後を決定するキーワードではないか。社会に対して開かれているということは人材についても社内外からその業務に最もふさわしい人材を求めることになり、常識的であるということは企業倫理につながる。市場原理の導入は効率的な資源配分をもたらし、情報開示は従業員・顧客の企業に対する信頼を得ることにつながる。

    そのような基本的な考え方の上で前述したような

    1. 企業理念の確立と誇りある会社(機会の平等、責任はあるが自由でやりがいのある仕事、社会に貢献する業務)への転換
    2. 事業分野の絞り込み
    3. 効率的で競争力のある企業組織
    について意志決定を行っていくことが赤貝信託銀行をより魅力的な企業にしていく。最終的な企業形態のイメージとしては大きくはないが特定の事業分野で強みを持つ個性的金融機関を目指し効率的で無駄のない組織、迅速で正確丁寧低コストのサービスを提供できることを誇りにするような高密度な企業である。

    このような提案を実現させるための施策として、アクションプラン策定委員会といった現状の組織を離れたプロジェクトの設立を行うことが考えられる。例えば20代・30代・40代といった年齢別に編成し、組織を離れた全社的観点からの議論を進める。単に議論しただけでは勉強会に終わってしまう危険性が高く、決定事項を経営に反映させる仕組みを工夫する必要がある。内容を全社員に開示し参加意識を持ってもらい、最終提案を経営会議で議論したうえで実行可能なものについて採用するといった全社的な意志決定プロセスにリンクした方法を提案したい。従業員にも参加意識を持たせ、経営サイドに対するチェック機能を持たせる新しい意志決定プロセスとして機能することが期待できる。

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