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人間とは、正しい説明よりも、わかりやすい説明に納得しやすいものです。資産運用の世界でも、「専門家」が説明していることと、実際に起こっている事実にはズレがあったりします。

写真は先週末の「伝説の投資家セミナー」で講師の長谷川陽三氏が作成した日米金融政策の発表と為替レートの動きを示したものです。

これを見ると、後講釈でコメントしている「専門家」と、リスクを取って相場を張っている「投資家」のマーケットの見方が異なることが、よくわかります。

ここ数年のドル円の為替レートは、金融政策によって決まってきたと多くの人が思っています。確かに、そのような側面はあるとは思いますが、アメリカの3回にわたる量的金融緩和(QE1~QE3)の発表と、その後の為替レートを見ると、必ずしも発表されたことが、即座に円高につながったとは言えないことがわかります。

逆に、ここ数年の円安についても、黒田日銀総裁がマーケットの予想を裏切って発表する金融政策、いわゆる「黒田バズーカ」によって、円安が大きく推し進められたというのが多くの人の理解ですが、チャートが示すように、日銀の発表の前に既に為替レートが大きく円安に動いていることが多く、「黒田バズーカ」の直接的なインパクトというのは、相対的にはそれほど大きなものではないのです。

為替というのは、株や債券とは異なり、「価値」を示すものではなく「交換比率」を示すものです。金融政策というのは、あくまで為替を動かす要因の1つに過ぎず、最終的には2つの通貨を交換する実需と投機のお金がマーケットでどの位動くかにかかっています。

つまり、金融政策よりも、市場参加者のお金の流れがどうなっているかを知ることの方が正確に為替の動きを知ることができるのです。ただし、それを正確に把握することは簡単ではありません。

個人的には、為替レートを予想して、それに基づいて売買をしてもあまり良い結果をもたらさないと思っています。それほど為替の世界とは複雑で、将来を見通すことができないのです。長谷川氏のような極めて限られた投資家には、お金の流れが何となく見えて、それが結果に結びついているのでしょうが、凡人にはマネができないことです。

だから、円高になっても円安になっても、最悪の事態にならないように、自分の資産全体の外貨比率をコントロールしておくことです。

少なくとも「黒田バズーカ」で円安になったと思いこんでいた人は、為替のトレードで儲けようと思わない方が良いでしょう。

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