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丸の内朝大学マネーコミュニケーションクラスの東北フィールドワークの2日目は気仙沼に移動し、男山本店の菅原社長にお話を伺いました。NHKの番組で渡辺謙さんの取材を受け、その後世界169ヵ国で放映されたという酒蔵、男山本店の震災時の映像(写真)を見せて頂きました。

男山本店の酒蔵は、高台にあったため震災の津波でギリギリ被災を免れました。しかし中心部にあった本社社屋や、ビン詰め工場は被害を受け、何より街の大半は壊滅した状態でした。停電で電気も通らず、水や燃料も不足して、避難所に人が凍えながら集まっている極限状態。そんな中、菅原社長は悩みに悩んだ末、酒造りをすることを決意します。

唯一といって良い、気仙沼で生き残った会社が、操業を断念することは、地域の人に悲しみを与える。それよりも酒造りを一日も早く始めて、人々に希望を与えたい。そんな無私の心が最終の判断基準だったから、その決断が多くの人たちに支持され、メディアの取材が殺到するような事態になったのです。

ビジネスの判断においては「何ができるかではなく、自分が今何をするべきかから考える」という発想には、酒造りを単なる商売ではなく、地域で代々続けてきた公のものと位置付ける高い見識を感じました。

気仙沼の中心部に行ってみると、未だに街は震災直後とあまり変わっていないことに気が付きます。がれきは片付けられましたが、街には建物も建っておらず、津波で被害を受けたビルがそのまま雨ざらしになっていたりします。

そんな中、男山本店は「蒼天伝」というブランドで数々の賞を受賞し、その品質の高さで世界的に注目される存在になっています。震災という極限状況からわずか数年なのに、ナゼそこまで高品質のお酒を造ることができるのか。菅原社長の高い理想を掲げる経営手腕が、従業員の意識の高さにつながり、それが素晴らしい商品として結実したのではないか。そんな気がしました。

2日間で震災で被害を受けた東北の経営者の方にお会いして共通して感じたことは、愚痴や恨みのようなネガティブなことは一切言わず、与えらた状況の中で何をすべきかを考えて、その1点に向けて全力疾走しているということです。

周囲のことに文句を言ったり、自分の現状の不運を嘆いたりする時間や余裕はないのです。ただ、一心に地域や周りにいる従業員、そして社会のことを考えて無私の気持ちでやるべきことに打ち込んでいく。

誰にも、自分に与えられた「持ち場」があるはずです。仕事でもプライベートでもそんな持ち場でやるべきことをどんな環境でも果たせる存在になることは、簡単なようで難しいことです。では、自分を顧みて、これからの人生でやるべきことは何か。そんな根本的な問いかけから考えていかなければならないことを痛感しました。

毎回大きな学びが得られるフィールドワークですが、今回もまたたくさんのものを東北から頂くことができました。来年もまた東北に行って学び続けていきたいと思います。

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