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「日本経済新聞社の良識」田村正之氏が日本の個人投資家の資産運用の問題を新聞紙上で指摘しています。世界的にインデックス投資が主流となっている中で、未だにアクティブ運用にウエイトを置いているという現実です(グラフも記事から引用)。

アクティブ投信の運用が全体としてインデックスに勝てないことは、過去のデータで実証され、世界の常識になりつつあります。過去5年間のデータで調べてみると、株式型の投資信託で比較対象とするインデックスに運用成果で下回った比率は、アメリカで9割弱、日本や欧州でも7割強という結果になっています。新興国の株式市場でも、同じような結果になっているそうです。

事実米国では、昨年インデックス投信に5048億ドルが流入し、アクティブ投信からは3401億ドルが流出。アクティブからインデックスへのシフトが加速しています。これは世界の機関投資家の間でも、数年前から起こっている流れです。

国内の日本株の公募投信も、ETF(上場投資信託)を含めると、80%がインデックス型になっており、インデックス化が進んでいます。ところが、機関投資家の購入が多いETFを除くと、2017年3月末のインデックス型の残高比率は28%で、5年前より5%も下がっているというのです。日本株以外の投資対象の投資信託も含めるとその比率は16%まで低下します。

さらに、金融庁のデータによると、2016年3月末の日本とアメリカの純資産が上位の投資信託を調べてみると、アメリカでは4本がインデックス型であるのに対し、日本はすべてアクティブ型になっていました。日本の上位5本の平均信託報酬は1.53%でアメリカの5.5倍と圧倒的なコストの差がついているのです。

つまり日本の個人投資家だけが、相変わらずアクティブ運用主体の運用を行い、高コストを支払ってるという「ガラパゴス化」が起こっているのです。

なぜ、日本の個人投資家だけが未だに高いコストを払って運用成果が出ない投資商品に資金を投入し続けるのでしょうか?

原因は金融機関、メディアそして金融専門家の「鉄のトライアングル」にあると思います。

アクティブ型の投資信託は販売している金融機関にとっては、高い販売手数料がもらえるおいしい商品。また信託報酬もインデックス型より高く、運用会社にとっても魅力的です。また、高収益なので、積極的に新聞やマネー誌でも広告宣伝を行います。経済メディアにとっても、無くなっては困る商品なのです。そして、真に個人投資家の立場に立って情報配信を行う一部の良識的な人を除き、金融の専門家の多くは相変わらず、個別の株式銘柄のコメントのようなアクティブな資産運用情報を提供し続けています。

3者の利害が一致する中で、個人投資家は蚊帳の外に置かれ、「カモ」にされている状態です。これに対抗するには個人投資家自らが知識を身に着け、行動するしかありません。

プロのファンドマネージャーが真剣に資産運用しても半分以上が長期にわたって負け続けるという事実は、個人投資家が自分で銘柄選択してもさらに勝ち目がないことを示しています。

時間をかけて銘柄選択すればするほど、自分の資産が平均以下に減っていく。であれば、時間をかけないでインデックス型の運用に統一すれば、シンプルで平均的な資産運用を低コストで実現できます。

日本人の資産運用が世界の機関投資家と同じ真っ当な手法に変わるのには、まだまだ時間がかかりそうです。せめて本ブログをお読みの読者の皆様には、正しい資産運用の方法を実践して欲しいと願います。

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