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ロボアドバイザーと呼ばれる新しいビジネスがあります。簡単な質問に回答するだけで、金融商品を組み合わせた「最適なアセットアロケーション」を提案してくれるサービスです。ファイナンスとAIのようなテクノロジーを組み合わせた典型的なフィンテック(FinTech)事業で、将来性があると思われたものの、業界は苦戦していると日本経済新聞が伝えています。

現在ロボアドバイザーを提供する会社は17社あるそうですが、最大手とみられるウェルスナビでも残高は150億円程度に留まり、全社合計でも1000億円に到達していないレベルと推定されています。ロボアドバイザーの収益は残高の1%以下ですから、1000億円としても年間で10億円以下。これではビジネスとして成立しません。

低コストのロボアドバイザーとは対照的に、信託銀行や大手証券が提供するラップ口座は、2017年3月末で業界全体で6兆5700億円の運用残高になっているそうです。対面でサービスを行い、ロボアドバイザーに比べ圧倒的に高コストです。アドバイス内容が特に優れているとも考えられないのですが、なぜ低コストで合理的なアドバイスを提供するロボアドバイザーには資金が集まらないのでしょうか。

まず考えられるのが顧客層の違いです。記事でも指摘されているようにラップ口座は、シニアのネットをあまり使わない人たちがメインの顧客で、ロボアドバイザーは若年層が多いと思われます。顧客1人当たりの資産規模が小さいので、利用者が増えても残高の伸びになかなかつながらないのです。

しかし、ロボアドバイザーが伸び悩んでいる最大の要因は、簡単な質問をインプットしてそこから定型的な資産配分が提示されるだけでは、利用者の納得感が得られないからだと思っています。ロボアドバイザーが、瞬時に算出した統計的に正しい資産運用の方法を見ても、果たしてそれで良いのか投資家には判断ができません。

これは病院に行った時のことを想像すればわかりやすいと思います。診察室に医者がいないで、8つの質問を入力したら症状の診断と処方箋が瞬時に出てきたら、どう思うでしょうか。科学的に合理的な診断内容であったとしても、納得する気にはなりにくいと思います。

ラップ口座は、対面の接客のツールとして活用し、結果を担当者がわかりやすく説明することで利用者の理解と納得感を得ているのだと思います。それに合理的な存在価値があるとは思いませんが、人が介在することで何となく安心できるという人は多いのです。病気になったときに医者に一言「大丈夫ですよ」と言ってもらうと気が楽になるのと同じ効果です。

そう考えれば、ロボアドバイザーの残高を伸ばすためには「顔が見えるサービス」が重要であることがわかります。対面で提供することはコスト的に無理だと思いますが、ロボットのイメージよりもヒューマンな要素を前面に出すことで、顧客の納得感を高めることが満足度の向上に必要なのです。

映画ロボコップの主人公のような、ロボットだけとウェットな人間臭さが共存するところに人は安心感を感じ、満足するのだと思います(写真はネットから引用)。

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