日本経済新聞によれば、首都圏の新築マンションの平均販売価格のサラリーマンの年収に対する比率は、5年ぶりに低下し、10.68倍になったそうです(図表も同紙から)。
一方で、マンションの平均価格の年収に対する比率は、7.13倍。こちらは上昇して23年ぶりの7倍台です。新築が高くなりすぎて、中古にシフトしたのが原因とされています。住宅ローン金利もこれ以上は下がりにくいでしょうから、サラリーマン向けの新築物件の価格上昇は、頭打ちと言えるでしょう。ただし、これが不動産価格全体と捉えるのは早計です。
首都圏のマンションマーケットは、3つに分けることができるからです。サラリーマンの実需購入マーケット以外に2つあります。
1つは富裕層マーケットです。1億円を超えるような東京の中心部の高級物件は、起業家、企業経営者や医者・弁護士といった、高収入・高資産の人たちがターゲットです。彼らは、自己資金も手厚く保有しており、現金購入も珍しくありません。「良いものなら買う」というスタンスで、年収は関係ないのです。
富裕層マーケットは相続税対策でのタワーマンションの購入は一服したようですが、都心の優良物件の人気は相変わらず高いようです。価格よりも、立地やクオリティ重視ですから、良い物件があれば販売に苦労することは無さそうです。
2つ目は投資家マーケットです。実需ではなく投資目的で物件を購入します。借入を返済するのは、自分の年収ではなく家賃収入になります。家賃収入と借入の兼ね合いで、投資判断をします。金利が下がり、長期の借り入れができれば、不動産価格が上がっても投資としては採算が合うのです。
アパートローンの融資抑制の影響を受けて、一棟ものの融資は間口が狭くなりました。しかし、中古ワンルームマンションは相変わらず、ソニー銀行、オリックス銀行、クレディセゾンといった金融機関が頭金10万円程度からほぼフルローンで融資を出しています。一定以上の年収があれば、ローンを返済するのは賃借人です。こちらも、金利が下がらないと価格は上昇しにくくなっていますが、融資環境が変わらなければ、価格は下がりにくいと思います。
「不動産は・・・」と雑駁(ざっぱく)に一括りにするのではなく、3つの購入層を分けて、それぞれを分析していくことが大切だと思います
■ 毎週金曜日に配信している無料メルマガ「資産デザイン研究所メール」。メールアドレスを登録するだけで、お金を増やすためのとっておきのヒントをお届けします。
■ 新刊「毎月100万円を生み出す人生戦略の立て方」、シリーズ累計17万部となった「初めての人のための資産運用ガイド」など、今までに出版された書籍の一覧はこちらから。
※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。