141226Russia

イギリスの経済誌「The Economist」がロシア経済について取り上げています。エネルギー価格の下落とウクライナ侵攻に対する欧米からの経済制裁によって、ロシアルーブルは対ドルで50%以上の急落。保有資産価値の下落とインフレーションという最悪の経済が始まろうとしています。

図は、その記事に記載されていた、過去に各国で発生した通貨暴落のインパクトを比較したものです。1990年代にジョージソロスのポンド売りに屈したイギリスポンド、アジア通貨危機でIMFの支援を受けた韓国など、短期間でドルに対する通貨価値が下落した例があげられています。

ドルに対して通貨価値が半分になるということは、現地通貨で保有している資産の価値がドルベースで半分になるということです。そして、ドルベースで輸入しているものの価格が、現地通貨では倍になるということを示しています。資産価値の下落によって富裕層は没落し、インフレの影響によって生活水準は下落していくという最悪の状態になってしまうのです。

通貨価値の下がる国では、国民が自国通貨に対する信認を持っていません。20年以上前に行ったブラジルでは急激なインフレと通貨価値の下落が続いていましたが、人々は米ドルだけを信用し、自国通貨レアルは出来るだけ手元に置かないようにしているのが印象的でした。

日本においては、ロシア程の急激な通貨価値の下落は今のところ起こっていません。また日本円とロシアルーブルでは通貨に対する信用度が圧倒的に異なります。しかし、スピードの差はあっても、通貨下落という同じ方向に進んているのは事実です。

ドル円の最高値は1ドル=76円台でしたから、もし今後円安が進み、1ドル=150円になれば、円の通貨価値は米ドルに対して半分になったことになります。ドル円がどこまで円安になるのかは予想することは難しいですが、為替変動のファクターを1つ1つ吟味していくと、今まで進んできた円安トレンドが反転してしまう材料はあまり見当たりません。

円安・円高いずれに振れても、パニックにならないようにするには、円資産と外貨資産のバランスの取れた保有が、唯一有効な対策です。年末年始はマーケット参加者が少なくなり、相場の変動が大きくなる傾向があります。来年お正月が過ぎたころには、為替レートが今とは随分違った水準に変わっている可能性もあると思います。

「ゆで蛙」という言葉があります。蛙という動物を熱湯に入れると、熱さの余り飛び出してきますが、水の中に入れてゆっくりと温度を上げると熱湯になっても気が付かず、そのまま茹で上がってしまうという話です。

将来のことは誰にもわかりませんが、日本人も「ゆで蛙」にならないように、早めに最悪の事態への対応をしておいた方が良いと思っています。ロシアの悲劇は、他人事ではなく、最悪のシナリオを直視できる格好のサンプルでもあるのです。

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