資産運用をしているけど、資産は一向に増えない。そんな悩みをセミナーで良く聞きます。「投資は儲からない」「資産運用なんて時間のムダ」と思っている人がいるようですが、それは「やり方」が間違っているのです。
日本経済新聞編集委員の田村正之氏が書いた記事の中で引用した、投資信託に関する日米比較データ(図表)は、日本人が知らないうちに陥っている「投資のワナ」をクリアに示しています。
日本とアメリカの残高が上位の「売れ筋ファンド」を比較したものですが、あまりにわかりやすいコントラストに驚きます。こんな違いがあります。
1.アメリカはインデックス運用が上位、日本はアクティブ運用が上位
2.アメリカは順位の入れ替わりが小さい、日本は順位の入れ替わりが大きい
3.アメリカは手数料(信託報酬)が0.2%前後がほとんど、日本は手数料が1.5%以上がほとんど
4.アメリカは毎月決算はゼロ、日本はすべて毎月決算型
5.アメリカは投資対象が株と債券、日本は投資対象が低格付け債やREITが中心
つまり、日本の投資家は、コストの高いアクティブファンドで運用し、毎月分配金を受け取って、投資先を株や債券以外の資産を中心に、銘柄をコロコロ変えているということです。
アクティブ運用とインデックス運用はどちらが良いかは、結論の無い「哲学論争」ですが、アクティブファンドでインデックスを上回る運用成績を出せるのは、半分程度であり、運用コストは高くなります。米国の信託報酬が低いのは、バンガードという低コストインデックス運用会社の存在が大きいからですが、年間で1%以上の差というのは無視できない数字です。1年1%なら10年では10%以上の格差となります。
また、毎月分配型で分配金をもらう商品に日本では人気が集中していますが、これも一部のシニア層以外には必要のない商品設計だと思います。
さらに、投資先も株式・債券という伝統的資産ではなく、REIT、低格付け債券、テーマ型ファンドとリスクの高い分野に偏っています。上位銘柄が変わっているということは、投資信託を(アドバイスされるがままに)次々乗り換える投資家が多いことを示します。
なぜ、このような間違えた投資信託で運用してしまうのか?それは、投資信託を販売している証券会社や銀行の窓口で言われるままに商品を購入している人が圧倒的だからです。
ただし、日本の投資家の中にも、自分で真っ当なファンドを選んで投資している「スマートインベスター」も存在します。
例えば、ネット証券の売れ筋商品を調べてみると、マネックス証券投信売れ筋ランキングの上位には、「インデックス」という名のついた商品が並んでいるのが、わかります。アメリカの投資家に近い運用方法です。
金融機関の窓口で「投資の相談」をしている人たちは、気が付けば「投資のワナ」に入ってしまっている。そんな日本の投信業界の「不都合な真実」に切り込んでいく、良識ある署名記事でした。
今週から書店に並び始めた「内藤忍の資産設計塾【第4版】」でも「投資のワナ」に陥らないための投資方法を具体的に提示しています。投資で失敗したくない人は読んでみてください。
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