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たまたま通りかかった赤坂の居酒屋に入ってみました。9時近くになっているのに、裏通りの目立たない場所に、次々にお客様がやってきて、賑わっている人気店のようです。

ところが店内に入って、お酒とお料理を注文してみると、ちょっとがっかりしました。お刺身は5切れほどのあまり鮮度の良くないもので1200円。全体に料理も凡庸で、決して安いお店でもありません。

ではなぜ、そんなお店なのに大勢のお客様で賑わっているのか?

その理由は「お店が温かく居心地が良いから」ではないかと思いました。

確かに、料理やお酒は完璧ではありません。店内は簡素ですが、温かみのある内装で、メニュの名前もひねりが効いています。お刺身から、ステーキ、ラーメンまで幅広いメニュがあって、団体で来ても、全員が気持ち良く楽しめるのです。

飲食店に来る人は、味だけを求めてくるわけではありません。お店の雰囲気や仲間との語らいを求めたり、音楽を気に入って来店する人までいます。このお店が、もし味だけにこだわって営業していたら、こんな繁盛店にはならなかったと思います。

対照的に、味はとても良いのに流行っていない飲食店があります。どれだけ美味しいお店であっても、そこで楽しい会話やリラックスした気分を味わえなければ、客層は一部のマニアに限られてしまうのです。

飲食に限らず成功している人に共通しているのは「相手のニーズを把握して、それに柔軟に対応できる能力」です。逆に、せっかく専門的な知識やノウハウがあってもうまくいかない人は、自分の強みだけを押し出して独りよがりになっているケースが多いのです。

仕事をしていて思うのは、仕事ができる人は能力の高い人とは限らないということです。周囲とのコミュニケーションを密に取り、ニーズを汲み取って、それに対応する柔軟性を持った人は評価が高く、信頼を得ていました。専門バカのような知識はあっても相手のニーズをまったく把握できない人は、いくら能力が高くても、単なる変わり者と見なされてしまうのです。

だから、仕事が思うようにいかない時、やるべきことは専門能力を高めることではありません。むしろ「自分は相手のニーズに対応できているのか」という問いかけをすべきなのです。コーラが飲みたいと言っているのに、こだわって温かいコーヒーを出していないか。和食が食べたい人に、高級フレンチを食べさせて自己満足していないか。

飲食ビジネスを経営者目線で見る習慣がついてしまいましたが、飲食店こそすべてのビジネスの縮図であることを、つくづく実感します。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。