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気仙沼の唐桑地区にある「唐桑御殿つなかん」は菅野一代さんが経営する民宿です。

丸の内朝大学マネーコミュニケーションクラスのフィールドワーク2日目は、朝からランチタイムを挟んでお邪魔して、「唐桑御殿つなかんのセルフブランディングを考える」というテーマでグループワークを行いました(写真)。40名の受講生からたくさんのアイディアが出て、実現可能になりそうなプランもいくつか見つかりました。

結婚して唐桑にお嫁に来た一代さん。嫁ぎ先は元々は牡蠣や帆立の養殖業を営んでいたのですが、2011年の東日本大震災で全てが流され、来ていた服と長靴以外の財産を失いました。自宅も3階まで浸水し、再生は不可能と言われ、取り壊そうと思っていたそうです。それがボランティアの人たちのサポートによって蘇り、民宿として営業を始めました。

ようやく経営が軌道に乗り、家族で力を合わせて仕事をしていた時、もう一つの悲劇が一代さんを襲いました。

昨年3月、漁船の転覆事故が発生。乗船していたご主人と娘さん、そしてそのお婿さんがいなくなってしまったのです(お2人は行方不明)。

震災で仕事と生活基盤を失うという大きな試練にさらされ、さらに家族を失うという、追い打ちをかけるような出来事。あまりのショックに、一時は命を絶つことも考えたといいます。

しかし、そんな時に心の支えになったのが、おじいちゃんから教えてもらった「与えられた運命を愛せよ」という言葉だったといいます。

私がつなかんさんを訪問したのは今回で3回目です。一代さんの明るい振る舞いを見ていると、自分が一代さんだったらどう思い、どう考えただろうかと、毎回自問自答が始まります。そこから湧き出る感情は、一代さんへのリスペクトだけです。

自分には到底到達できない強くしなやかな心。辛いこともまだたくさんあると思いますが、それを日々乗り越えて、明るく周りの人たちを巻き込んでいく。話を聞いているだけで勇気や感動を与えてくれます。

唐桑御殿つなかんは東京からのアクセスも悪く、温泉付の大きな浴場があるような豪華な旅館でもありません。ここに来る人は、一代さんに会いに来ます。宿について、のんびりして、ご飯を食べ、掘りごたつにみんなで入って、一代さんと話をする。ここにしかないプライスレスな価値です。

ここは、旅館や民宿ではなく「一代さんのお家」です。今回は日中の短い時間でしたが、閑散期の冬になったら、またゆっくりお家に遊びに行こうと思っています。

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