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久しぶりに夢中になって読む本を見つけました。プロ野球の中日ドラゴンズを率いた落合監督を描いた「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」というスポーツノンフィクションです。

500ページ近い分厚い本で定価は2000円を超えます。しかし、文章が読みやすく、リアルな描写に思わず引き込まれ、一気に読んでしまいました。

落合博満氏といえは、現役時代に3回の3冠王になり、監督としても中日を日本一にした実績を持つ、プロ野球界の名選手にして名将です。

しかし、長島茂雄氏や新庄剛志氏のような華のある人気スター選手ではありません。

どちらかといえば野村克也氏や王貞治氏に似た職人肌の求道者のようないぶし銀の存在です。実力と人気が比例しておらず、むしろ「アンチ落合」のような嫌われるタイプだったかもしれません。

不器用で自分をうまく表現できないが、自分の技術には自信を持って妥協をしない。私は、この手の職人肌のストイックな人に惹かれます。

落合氏は、監督として多くを語らなかったところが、他のチームに不気味な印象を与え、さまざまな誤解を生む原因になりました。

また、徒党を組んだり理不尽なことをしたりすることを嫌い、プロ野球に残る時代遅れなやり方に背を向けたことも反発を招きました。

有名なのは日本シリーズでノーヒットノーランを続けていた山井投手をノーヒットのまま8回まででで交代させた「事件」です。落合監督の非情な采配と言われ、ファンから大きな非難を浴びました。

しかし、本書を読むと日本一になるという監督の与えられた使命として、投手の状態を見て、ベストと判断したことを淡々としただけのことであることがわかります。

落合氏の打撃や守備に関する知識や技術は、独学で学んだとは思えない極めて高度な緻密なものです。

感覚ではなく論理で詰めていくアプローチは、野村克也氏とよく似たところがあります。ただ野村氏の指導法は、毎回ミーティングで選手に教え込む方法。それに対し、落合監督は何も言わずに体で覚えさせるやり方。選手への指導法は対照的でした。

本書を読むと、鉄の二遊間と言われた荒木選手、井端選手をはじめ、落合監督によって長所を伸ばし、大きく成長した選手がたくさんいることがわかります。

抑えの切り札だった岩瀬投手でさえ、落合監督がリリーフに抜擢し、大きくその才能を開花させたのです。

このような個性的で卓越した指導者は、もう日本のプロ野球には現れないでしょう。

最近はファンサービスで喜ばせるエンターテイメントを重視した野球が主流になりました。

それも楽しいかもしれませんが、かつてのようなスリリングでピリピリした野武士がぶつかり合うワイルドな野球が消えていくのは寂しいものです。

中日ファンでなくても、アンチ落合の人であっても、スポーツ好きな人には、強く一読をお勧めします。

<参考図書>
「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」 鈴木忠平 著

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