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141008PIMCO

イギリスの経済誌「The Economist」にこんな記事を見つけました。債券王と呼ばれたPIMCOのビル・グロス氏の辞任についての考察です。

運用会社PIMCOのCEOだったビル・グロス氏が、同社の旗艦ファンドである「トータル・リターン・ファンド」の運用成績低迷の責任を取る形で、ジャナスという別の運用会社に移籍しました。今後はマネジメントよりも、むしろ運用担当者としての職務にウエイトをおいて仕事をしていく方針だといいます。

トータル・リターン・ファンドはファンドマネージャーが銘柄選択を行う「アクティブファンド」ですが、これは市場平均を確実に狙う「インデックスファンド」と比較した場合、大きな違いがあります。 それは、ファンドのサイズと運用成績の関係です。

インデックスファンドは市場の平均を狙う訳ですから、簡単に言えば、マーケットのミニチュアを相似形で作れば良いことになります。実際にはインデックス運用にも様々な技術が必要ですが、ファンドのサイズが大きくなっても、それに見合った運用ポートフォリオを作っていくのは、理論上は難しくありません。 ところが、アクティブファンドの場合、ファンドのサイズが大きくなると、市場を上回る超過収益を得られるチャンスは限られていますから、運用成績はインデックスに近づいていくことになります。

例えば、日本株の中小型株を対象にしたアクティブファンドの場合、運用金額が500億円を超える位になってくると、運用の小回りが効かなくなり、パフォーマンスに影響が出てくると言われています。 つまり、運用成績が良いファンドが人気になって、資金が集まり始めると、それによって運用成績が低迷してしまうという「アクティブファンドのパラドックス」が発生するのです。 先ほどの500億円というのは飽くまで目安であって、実際には運用対象が何かによって適正なファンドサイズは異なります。

いずれにしても、インデックスファンドは規模が大きくなれば運用しやすくなるのに対し、アクティブファンドは一定の規模を超えると、運用しにくくなるという宿命を持っているのです。アクティブファンドのこのような問題をThe Economistでは「Big Fund Issue」と呼んでいます。 アクティブファンドにおける同様の問題は、フィデリティの有名な旗艦ファンド「マゼランファンド」でも起こった問題です。

ビル・グロス氏と同様にカリスマファンドマネージャーとして知られる、ピーター・リンチ氏が運用するファンドが巨大化しすぎてしまい、リンチ氏が運用担当を外れてから、運用成績が悪化しました。成績悪化の結果、投資家の資金は流出し、ファンドのサイズは一気に縮小してしまいました。

この記事から言えることは、アクティブファンドの運用成績が良いからと言って、それを見て投資を始めるのは必ずしも賢い戦略ではないということです。成績が良くなって、資金が流入し始める前にアクティブファンドを見つけられれば良いですが、値上りする株を上がる前に見つけるのと同じくらい難しいことです。 同じ投資信託でも、どちらの運用方法かによって、ファンド選択に大きな違いがあることは、投資信託で資産運用している個人投資家は知っておくべきでしょう。

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