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「馬券裁判」という本を読みました。100万円で競馬をはじめで1億円以上に増やしたものの、外れ馬券が経費として認められず、地方税と加算税を合わせて10億円近い課税を受け、裁判で勝訴したという実録の体験談です。ギャンブルと裁判の本ですが、資産運用に関しても参考になることが詰まっている奥深い本です。

著者が、競馬で成功したポイントは2つあります。

1つは「歪み」の研究です。競馬も投資と同じようにどこに賭けるかが結果を決めます。著者の方法は「他の人が過小評価しているファクターで馬を選ぶ」というやり方です。強い馬に投資するのではなく、実力に対してオッズ(賭け率)が高すぎる馬を見出すのです。

例えば、競馬新聞などでは前走の着順をデータとして掲載していますが、1着や2着の実績は強調されるのに対し、4着はあまり評価されていないそうです。また、出走数を考慮しなければ、着順には意味がありませんが、それも考慮されていません。とすれば「出走数の多いレースで4位になった馬は過小評価」といった仮説を立てられます。

このような情報の「歪み」に対する仮説を立て、それらを組み合わせて精度を高めることができれば、競馬で超過収益を得ることは不可能ではありません。

もう1つは、掛け金の研究です。著者はスランプになると資産のかなりの部分をマイナスにしてしまいますが、資金がゼロになることはありませんでした。その理由は資金管理をしっかりやっていたからです。競馬の場合オッズが高い大穴を狙うと外れが連続して続く可能性があります。そこで、著者は掛け金を

掛け金 = 現在残高 × 係数(例えば0.1)÷ オッズ

とすることでリスクの高い(オッズの高い)勝負の掛け金を減らすようにしていたのです。また、オッズの高い賭けは成績が不安定になること、自分の掛け金によってオッズが下がってしまう影響が大きいことから、なるべく的中回数の多い本命の中から「歪み」を狙うようにしていったそうです。

競馬で儲けたお金が、BRICsのアクティブファンド(投資信託)につぎ込まれ、半分以上を失ったというのは、ファンドマネージャーにとっては「不都合な真実」ですが、そもそもギャンブルと投資には本質的な違いがあります

それは、ギャンブルでは新しい価値が生まれませんが、投資では新しい価値が生まれるということです。競馬で1億円稼いだとしてもそれは、他の競馬をやっている人からの富の移転に過ぎません。競馬をやっている人の損益の合計は、胴元のJRAに差し引かれ常にマイナス25%になっているのです。

ところが、投資の場合は、新しい価値が生まれれば、全ての投資家がプラスになることもあり得ます。富の移転ではなく、富の創造なのです。ただし、やり方を間違えると著者のような結果になってしまいます。

競馬で極めて真っ当な方法で資産を増やした人が、投資では稚拙な集中アクティブ投資で失敗したというのは、皮肉な話です。著者が競馬の手法を株式投資で実践したらどうなるのか、興味のあるところです。

<参考図書>
「馬券裁判」 卍(まんじ)

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